医療裁判紹介バックナンバー
医療裁判:医療事故に関する患者への説明義務
2015年09月02日
本件は,腰椎椎間板ヘルニアの摘出手術を受けた患者(62歳男性)が,執刀医が部位を取り違えて手術を行ったことにより,棘突起などの支持組織を 切断,損傷した結果,後遺障害等級6級に該当する腰部不安定および腰部痛の後遺症を負わせられた,また,部位を誤認したこと等に関する説明がされていないなどと主張して,執刀医の勤務する病院に対し,4689万余円の損害賠償を求めて訴訟を提起した事案である。(横浜地方裁判所平成24年8月9日判決)
医療裁判:歯科治療を進めるに当たっての説明とリーマー破折に対する対応
2015年09月01日
歯並びが気になっていた患者(女性,22歳)が,知人の友人からの紹介で歯科クリニックに行き,補綴矯正を受けた。しかしその後,歯肉に痛痒さを感じるようになったため,他の歯科クリニックへ通院したところ,歯肉炎,歯周炎,リーマー残置等が認められた……(東京地方裁判所平成24年9月13日判決)
医療裁判:豊胸手術に関する説明義務
2015年08月02日
患者(女性,事故当時31歳)は,豊胸のため乳房内に挿入していたインプラントの抜去と脂肪注入による豊胸術を受けようと思い,クリニックを受診した。しかし,受診した際に観た脂肪注入術に関するDVDの内容が,希望するような十分な豊胸効果が期待できない等,受診前に電話で問い合わせた際の説明内容と異なることから,患者は医師から直接説明を聞きたいと看護師に伝えたが,「手術の申込書にサインをしないと医師には会えない」,「今キャンセルすれば100%のキャンセル料がかかる」と言われ,結局,患者は手術申込書にサインをした……(東京地方裁判所平成25年2月7日判決)
医療裁判:治験実施計画書に違反する治験の実施が民事法上の違法性を有すると判断された一例
2015年08月01日
植込み型補助人工心臓の治験に参加し,人工心臓植込み手術を受けた患者(当時39歳あるいは40歳女性)は,術後約1年3ヵ月後に胃穿孔を起こし,さらにその約1ヵ月後に脳出血により死亡した。これを受けて,遺族らは,本件植込み手術の実施は治験実施計画書(プロトコル)において定められた被験者の除外基準に違反するものであり,民事法上も違法と評価されなければならない等と主張し,同治験が行われた病院の運営主体である学校法人に対し損害賠償を求めて提訴した……(東京地方裁判所平成26年2月20日判決)
医療裁判:患者の配偶者(医師)の対応を理由に過失相殺された事例
2015年07月02日
左腰痛を訴えた患者(当時56歳・女性)が市内の基幹病院で左尿管結石と診断され,元麻酔科医で内科医である夫とともに説明を受けた後,痛み止め等を処方され,帰宅した。患者はその晩から悪寒,発熱等が発現したが,病院で処方された薬では無く,医師である夫の指示に基づいた薬を服用。しかし,震え,嘔吐,頻脈が発現したため緊急搬送された。その後,緊急搬送された病院において対応した医師に敗血症の発症を看過され,その結果,患者は敗血症性ショックに陥り,他院に緊急搬送されたものの,昏睡状態が続いた後,敗血症性ショックを原因とする心肺停止状態による低酸素性脳症によって死亡した…(水戸地方裁判所平成27年2月19日判決)
医療裁判:放射線科医の読影結果を確認しなかった医師の過失が否定された事例
2015年07月01日
患者(男性,当時71歳)は,心窩部痛と嘔気を訴えて市民病院救急外来を受診した。救急外来の担当医は,腹部骨盤部CT検査を依頼し,同検査の画像を確認して胆のうの異常を疑い,翌日に消化器科を受診するように伝えたが,放射線科医の読影結果では,胆のうの異常に加えて,本来の精査目的ではない肺野についても,異常を指摘する所見が得られていた。しかしながら,患者が翌日に消化器科を受診した時までに同放射線科医の読影結果が報告されておらず…(名古屋地方裁判所平成25年11月8日判決)
医療裁判:患者から訴訟提起された場合に診療を拒否したことが適法とされた事例
2015年06月02日
患者(当時40歳代,女性)は、病院で不妊治療を受けていたが胚移植に至らず,その結果,治療継続中であったにもかかわらず,不妊治療の過誤を理由に病院に対して訴訟提起をした。これを受けて,病院の医事課長が病院名義で「転医および診療延期のお願いについて」と題する書面を患者に送付したところ,患者は,病院による違法な診療拒否があったとして,損害賠償請求を行った事案である…(弘前簡易裁判所平成23年12月16日判決)
医療裁判:褥瘡予防・管理に関する法的責任
2015年06月01日
糖尿病の既往がある患者(男性・死亡時60歳)が,小脳出血により緊急搬送され,手術後,寝たきり状態となった。その後,ある程度回復した患者は,自宅近くの病院へと転院したが,転院先の病院で褥瘡が発生した。医師は褥瘡部の痂皮の切除等の処置を講じるとともに輸血や鉄剤の投与あるいは栄養状態の改善を施したりしたものの褥瘡が増悪し,やがて男性は腎不全により死亡した…(東京地方裁判所平成9年4月28日判決)
医療裁判:子宮外妊娠の可能性がある患者への受診指導方法の適否
2015年05月02日
妊娠検査薬で陽性反応が出たことから婦人科を受診した患者(当時36才)が,初診翌朝に電話で病院に腹痛を訴えた。対応した看護師は子宮外妊娠の危険性を伝えた上で受診を促し,続けて,尿hCG測定検査結果を踏まえ,担当医師からの指示を受けた事務員が患者へ早期受診を促す電話をした。しかし,患者は午前11時までに来院すると伝えるものの,結局,来院はしなかった。その後,昼過ぎに患者から腹痛で動けないとの電話があり,心配した看護師が救急車を呼んだが,救急隊員が到着した段階で心肺停止状態,翌日右卵管間質部妊娠による卵管破裂を原因とする出血性ショックにより死亡した…(名古屋高等裁判所平成25年2月28日判決)
医療裁判:院内生存率と相当程度の可能性
2015年05月01日
下腹部痛および呼吸苦を訴えて救急車で搬送されて入院した患者(23歳,女性)に対し,それぞれの診療科の医師が種々の検査をするも,原因を特定できず,最終的に大動脈解離で死亡した…(札幌地方裁判所平成24年9月5日判決)