医療裁判紹介バックナンバー
医療裁判:術後合併症に関する説明義務
2013年12月01日
嗄声を自覚した男性(当時67歳)が,検査の結果,食道扁平上皮癌,左側反回神経リンパ節転移と診断された。大学病院において,化学放射線療法を受けた後,食道全摘術,食道胃管縫合術,左反回神経合併切除術を受けたところ,肺炎および嚥下障害を来し,その後胸水貯留などを併発して,手術から1年6ヵ月後に死亡した。本件は,男性の遺族が,術前の化学放射線療法によって肺炎や嚥下障害の発生頻度が高くなる等に関して,十分な説明がなかったとして大学病院を訴えたところ,十分に説明したとする大学病院側の主張が認められた事例である。(東京地方裁判所平成22年1月15日判決)
医療裁判:電子カルテの改ざんと裁判所の反応
2013年11月02日
うつ病と診断された女性(死亡当時43歳)が通院期間中に過量服用を繰り返した後,最終的に診療時間外に過量服用したことが原因で死亡した。本件は,精神科医が女性に対して抗うつ薬を処方するに際し,ほぼ毎回診察に同行していた女性の夫に対して,過量服用した場合には,医療機関の診療時間でなければ119番通報することを含めてただちに医療機関を受診するように指導すべき注意義務があったとされた事例である…。(大阪地方裁判所平成24年3月30日判決)
医療裁判:胃癌手術後,CEAの軽度上昇が見られた患者に対する治療上の過失と説明義務
2013年11月01日
進行胃癌と左腎癌に対する手術を受けた男性(胃癌手術当時64歳)が,その後,年に2〜4回,経過観察として腫瘍マーカーのひとつであるCEAの測定を受けていた。数年後,男性はCEA値が軽度上昇した後,大腸癌およびこれに起因する多発性肝癌を発症し,結腸左半切除術,肝部分切除術,ラ ジオ波焼灼術(RFA)を受けたが,肝不全で死亡した。本件は,男性の相続人である妻と子どもが,病院に対し,大腸癌の確定診断に必要な検査を怠った過失があったと主張して損害賠償を求めた事例である。審理の結果,請求は棄却された。(東京地方裁判所平成23年3月24日判決)
医療裁判:細胞診検査の実施義務
2013年10月02日
乳房のしこりを自覚して来院した女性(当時56歳)に対し,超音波検査,マンモグラフィー検査等を行い,乳腺症と診断し,経過観察とした。2回目,3回目の検査にて乳腺嚢胞と診断したが,4回目の検査において乳癌が疑われ,細胞診検査にて悪性と診断された。その後,女性は乳房切除術等を受けたが,死亡した。本件は,女性の遺族が,2回目もしくは3回目の検査において,細胞診検査を実施すべき義務を怠ったとして損害賠償を求めたものである。審理の結果,原告の請求は一部認容された。(仙台地方裁判所平成24年5月7日判決)
医療裁判:肝穿刺実施における過失の有無
2013年10月01日
血管腫の疑いがあると診断された女性(当時40歳)が大学病院に入院後,採血検査の結果,播種性血管内凝固症候群(DIC)の状態にあると判定されたため,原因探索のため肝生検が実施された。その結果,女性は皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫(SPTCL)と診断され,翌日から3種類の抗腫瘍剤とステロイドを併用投与する多剤併用療法(CHOP療法)が開始された。その後,腹部エコー検査を実施したところ,肝臓に腫瘤様の塊が見られ,CT検査とMRI検査が実施された結果,腫瘤様の塊は,胆汁瘻,血腫,膿瘍のいずれかであることが疑われた…。(東京地方裁判所平成22年1月22日判決)
医療裁判:前医が後医に対して負う義務とは
2013年09月02日
地元の病院で排卵誘発治療法(hMG-hCG療法)による不妊治療を受けていた女性が,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と診断され入退院したが,第1子を無事出産した。第2子を希望した女性は,再び同じ病院でhMG-hCG療法を再開。女性が担当医の指示に従わずに実家へ帰省した後,帰省先の病院でOHSSの診断を受けて入院することとなった。その後,第2子の妊娠が明らかになったが,OHSSが増悪したため人工中絶手術を受け,その2日後に突然チアノーゼと呼吸困難が発生し死亡した…。(横浜地方裁判所平成16年12月27日判決)
医療裁判:患者の診療拒否と医師の責任
2013年09月01日
酩酊して交通事故を起こした男性が,病院に救急搬送された。男性は,医師らの説明,説得にもかかわらず検査の続行を拒否して警察の事情聴取へと向かったが,警察署でスポーツ飲料を飲んだ途端に倒れて,再度救急搬送されたものの死亡した。本件は,患者の妻子が,医師には診療を続行すべき義務の違反があるなどとして損害賠償を求めたものの,審理の結果,請求が棄却された事案である。(札幌地方裁判所平成13年4月19日判決)
医療裁判:医学的根拠のない患者の不安感を解消させる説明をしていないなどとして麻酔科医に説明義務違反を認めた事例
2013年08月02日
子宮腺筋症,子宮頸管ポリープと診断された女性(45歳)が腹式子宮全摘出術を受けた。手術前,女性は過去の筋弛緩剤や鎮痛剤による副作用の経験から,手術の際に使用する麻酔薬に対して不安を持っていたため,麻酔科医の説明を求めたが,女性の不安は医学的根拠がないということもあり,麻酔科医から十分な説明がされることはなかった。本件は,手術後,女性の足に疼痛,痺れ等の症状が生じたため,麻酔科医に対して,不安を解消させる説明が果たされていないと損害賠償請求された事例である。(東京地方裁判所平成20年5月9日判決)
医療裁判:添付文書上原則禁忌とされている造影剤の投与
2013年08月01日
喘息の既往のある女性(36歳)が頭痛,左肩の痺れ,左背部の張り等を訴えて病院の循環器科を受診した。問診した医師は主訴等から大動脈炎症候群 を疑い,副作用発現の際の対策を講じた上で,「喘息のある患者」が添付文書上原則禁忌とされている造影剤を用いて造影CT検査を実施。この造影 CT検査実施の際,喘息発作が発現したことについて,女性が病院,担当医師に対して,喘息の既往がある患者に造影CT検査を行った過失,ならびに 副作用の危険性と検査の必要性の説明を怠った過失があるとして100万円の慰謝料請求をした事例である(東京地方裁判所平成19年7月20日判決)
医療裁判:介護老人保健施設での高齢者転倒
2013年07月02日
医師会が運営する介護老人施設にパーキンソン病,神経症,抑うつ状態,眩暈症等の診断を受けた女性(当時79歳)が入所した。女性は入所時,見守りが必要であるも,杖を使えば少しよろけながらも一人で歩ける状態であった。しかしその後,転倒を繰り返し,幻覚等の症状が出てきたことから,施設側は女性を認知症専門棟へ移動させ,夜間に見守りをしやすいよう見通しの良い場所にベッドの位置をずらす等の対策を取った。しかし,夜勤の介護福祉士が気づかないうちに女性は転倒し,左大腿骨転子部を骨折した…(東京地方裁判所平成24年3月28日判決)


