医療裁判紹介バックナンバー

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医療裁判:喘息治療薬の副作用に関する説明義務違反が否定された事例

2025年04月16日
気管支喘息と診断されてストロイド投与等の治療を受けていた患者(女性,当時40歳女性)が,治療終了後,股関節痛を訴え受診したところ,突発性大腿骨壊死症と診断され,両側人工股関節置換術を受けることになった。 本件は,特発性大腿骨頭壊死症が生じるというステロイド投与の副作用に関する説明義務違反がある等として,患者が病院に対し損害賠償を求めた事案である。 裁判所は,当時において,特発性大腿骨頭壊死症がステロイド投与の副作用であると医療水準として確立していたとはいい難く,患者が特に特発性大腿骨頭壊死症の発生について関心があったなどの事情もないことから,大腿骨壊死症の可能性について説明すべき義務があったとは認められないとして,請求を棄却した。(東京地方裁判所令和4年8月10日判決)

コラム:病棟看護師はどこまで夜間・休日の電話に対応しなければならないか?

2025年03月14日
Q1.夜間や休日の時間帯に入院患者に発生した病態の変化や転倒等の事故について,すぐに患者家族に電話で報告しなければならないかを悩んでいます。 当院では,緊急に治療方針を決めなければいけないような時は,夜間や休日であってもすぐに病棟看護師が家族に電話連絡をしていますが,そうでないときは対応がまちまちで,すぐに電話連絡がなかったことで家族からお叱りを受けることもあります。統一的な対応にした方が良いと思うのですが,法律的に留意することなどあれば教えてください。

医療裁判:前医が依頼した病理医による「胃がん」との病理診断に基づいて 胃切除術を行った後医が,実際には胃がんでなかったため 法的責任を問われた事例

2025年01月24日
後医にあたる大学病院が,前医の依頼した病理診断医の印環細胞がん(Group5)であるとの病理診断に基づき,患者(本件手術当時44歳)に対し,幽門側胃切除術を行った。その後,実際には胃がんでなかったことが判明したため,患者が,大学病院に対し,胃がんであると誤診して手術を行ったとして損害賠償請求をした。 裁判所は,大学病院において,再度の生検を行いまたは標本を取り寄せて病理組織検査をすべき義務があったとは認められないとして,請求を棄却した。 なお,本件において,患者は,訴訟係属中に死亡し,患者両親が訴訟を承継していた。(熊本地方裁判所令和2年3月25日判決)

コラム:警察から患者の情報について照会があった場合,どのように対応すればよいか?

2024年12月20日
Q1.当院に通院中の患者が,刑事事件の被疑者として逮捕されたようです。警察から当院に電話があり,患者の病状や治療経過の回答を求められました。患者の情報を本人の許可なく警察に伝えてもよいでしょうか。また,回答する場合の留意点を教えてください…

医療裁判:抗凝固薬の休薬期間中に患者が脳梗塞で死亡したことに関して処方医の過失が認められた事例

2024年11月19日
本件は,大腸ポリープに対する内視鏡的粘膜切除術を受けた翌日に脳梗塞を発症して死亡した患者(男性,当時62歳)の相続人が,「患者の死亡は,患者が常用していたリバーロキサバンの休薬期間について意見を求められた際に医師が不適切に長い1週間の休薬期間を回答したためである」などと主張して,医師,病院に対し,損害賠償をそれぞれ求めた事案である。 裁判所は,医師が1週間の休薬期間を要すると回答したことについて過失があるとした。その上で,この過失が無く,78時間程度の休薬に留めていれば,患者が死亡した時点で生存していた高度の蓋然性があったとまではいえないまでも,同時点でなお生存していた相当程度の可能性があったとして,患者の慰謝料を900万円と認定し,請求を一部認容した。(東京地方裁判所令和元年9月12日判決)

コラム:差額ベッド代の請求ができるケースは?

2024年10月23日
Q1.当院で大部屋に入院している認知症の患者が、夜間の独語など他の入院患者に対して影響を及ぼす行為が見られるようになったため、大部屋での入院継続は困難と判断し、患者およびその家族に対し退院するか個室に移動するかを訊ねた上、大部屋と個室との差額(差額ベッド代)を明記した同意書への署名をしてもらい、個室に移動してもらうこととなりました。この場合、患者に対し差額ベッド代を請求することは可能でしょうか。

医療裁判:人工骨頭置換術後に左坐骨神経麻痺が生じた症例において, 医師の手技上の過失および説明義務違反が否定された事例

2024年09月20日
患者(昭和28年生,63歳女性)が,人工骨頭置換術を受けた後,左坐骨神経麻痺が生じた。この坐骨神経麻痺は,担当医師が手術の手技を誤ったためであるとして,患者は病院に対し,損害賠償を求め,仮に手技の誤りがなかったとしても,医師は事前に坐骨神経損傷が生じ,可動域制限が生じる危険性があることを説明するべきであったとして慰謝料を求めた。 しかし,裁判所はいずれの請求も認めなかった。(一審:奈良地方裁判所令和3年2月25日判決 控訴審:大阪高等裁判所令和3年9月8日判決)

コラム:医師が患者からストーカー被害を受けた場合の対応は?

2024年08月25日
先日、当院の男性医師から、「患者から好意を持たれ、ストーカー被害を受けている。このまま診療を続けるのは怖い」との相談を受けました。私も院長として医師の力になりたいと思っているのですが、どのような対応をすべきでしょうか。警察に相談をすれば何かしてくれるでしょうか。尚、当方男性です。

医療裁判:信頼関係の破綻を理由に行った診療拒否が違法とされた事例

2024年07月15日
患者は,診療所において,継続的に不妊治療を受けていたが,院外において,診療所の看護師と患者の知り合いを名乗る人物との間のトラブルが発生したこと等を理由とし,同診療所から診療を拒否された。 患者は,診療所を運営する医療法人に対して,診療拒否は債務不履行または不法行為にあたるとして慰謝料を請求した。 これに対し,裁判所は,診療所が患者から事情を聴かずにただちに診療を拒否したこと,診療所と患者との間の信頼関係が損なわれたとはいえないことを理由に,診療所が患者の診療を拒否する正当な事由があったとは認められず,診療拒否は債務不履行または不法行為にあたるとして,請求の一部を認容した。(東京地方裁判所令和3年3月30日判決)

コラム:メンタルヘルスの不調で休職していた職員の職場復帰について

2024年06月14日
メンタルヘルスの不調により数ヵ月の間休職していた当院の看護師1)が,職場復帰を希望しているようです。ただ,この職員が休職する直前は頻繁な遅刻や欠席があり,また同僚や患者に対して意味不明な言動を行うなど見られたので,本当に職場復帰できるのか不安があります。どのように職場復帰の可否を判断すればいいのでしょうか。
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