医療裁判紹介バックナンバー
医療裁判:終末期医療における患者家族からの意見集約方法
2020年11月12日
脳梗塞による意識障害のために入院し経鼻経管栄養の注入を受けていた患者(女性,当時89歳)に対し,患者と同居する長男が経鼻経管栄養の注入速度を上げ,その後患者が嘔吐し,誤嚥性肺炎により死亡した…(東京地方裁判所平成28年11月17日判決)
医療裁判:診療録への記載のないことや記録が存在しないことが訴訟上の事実認定に与える影響
2020年10月15日
分娩後に脳性麻痺となった児(約3年後に死亡)の父母が,分娩中の注意義務違反(オキシトシンおよびブピバカインの各投与,吸引分娩およびクリステレル圧出法の選択,分娩監視装置装着に関する各注意義務違反)を主張して,医療法人および担当医に対し損害賠償を求めた事案…(京都地方裁判所平成30年3月27日判決)
コラム:薬剤師でないスタッフによる調剤業務の補助はどこまで可能か?
2020年10月14日
Q.病院勤務の薬剤師です。病院のスタッフ(薬剤助手)に業務の補助をしてもらいたいと考えていますが,薬剤師資格のない人にどこまでやってもらっても問題ないのでしょうか。
医療裁判:専門外の疾患についての専門医療機関紹介義務
2020年09月25日
B型肝炎ウイルス保持者である患者(初診時48歳,男性)が,バセドウ病の治療のため,内分泌疾患や代謝性疾患を専門とするクリニックに通院していた。担当した医師は,B型肝炎の悪化を想定し,肝機能が悪化した場合は他院を紹介する旨をカルテに記載していた。患者は,約5年間にわたりクリニックに通院したが,その後,他院で肝がんと診断された…(京都地方裁判所平成28年2月17日判決)
コラム:患者弁護士からの医療照会における注意点について
2020年09月09日
Q.過去に当院で治療を受けていた患者の弁護士から,当時の治療経過について少し話を聞きたいとの連絡がありました。
患者本人からの要請であれば応じるのですが,弁護士からは何を追及されるかわからず,診療も忙しいので,断っても大丈夫でしょうか……
医療裁判:処方薬に関し医師と薬剤師が負う説明・指導義務の関係について
2020年08月18日
肺非結核性抗酸菌症に対しエタンブトール(EB)錠の処方を受け服用していた患者(本件当時58歳,男性)が,眼の異常を自覚し自主的に服用を中止した。その後両目の視力が低下し失明したことから,医師にEB錠を処方する際の説明,指導義務等があった等として訴訟を提起した…(秋田地方裁判所平成30年2月16日判決)
コラム:メンタルヘルスに不調を来していると疑われる職員に対する対応
2020年07月13日
Q.当院で勤務している看護師が、遅刻や欠勤が多いなど勤怠不良があり、同僚や患者に対して意味不明な言動を行ったりするなど、日常的に不適切な言動等が現れています。この看護師はメンタルヘルスに不調を来しているように見えるのですが、当院としてはどのような対応をとるべきなのでしょうか。
医療裁判:歯科医院における局所麻酔後のバイタルサイン観察について
2020年06月16日
開業歯科医師の下で虫歯治療を受けた患者(平成10年生まれ,事故当時4歳)が,虫歯治療時に使用された局所麻酔薬を原因とするアナフィラキシーショックにより呼吸循環不全に陥り,搬送先の病院で死亡した……(さいたま地方裁判所平成22年12月16日判決)
コラム:消滅時効に関する民法の改正とカルテの保存について
2020年05月14日
当院は、最近になって電子カルテを導入したので、まだ紙カルテが多く残っています。カルテを保存する期間については、顧問弁護士から「法令上のカルテ保存期間よりも消滅時効期間の方が長いので、患者側から損害賠償を請求されたときに対応できるよう、消滅時効までの10年間はカルテを保存しておいた方が良い 」との説明を受けています。
しかし、今般、民法が改正されて消滅時効期間が変わると聞きました。この改正に伴い、カルテを保存しておいた方が良い期間も変わるのでしょうか。
医療裁判:頭蓋内圧亢進症の診断のためのCT撮影義務と帰宅指示後の経過観察義務について
2020年04月14日
本件は,深夜,頭痛,嘔吐,下痢を発症し,救急受診した患者(平成8年生まれ当時13歳男児)に対し,急性胃腸炎の診断の下,治療を実施し,帰宅を指示したが,朝になり脳ヘルニアにより死亡したという事案である。
死亡した患者の遺族が,救急搬送時,頭蓋内圧亢進症を疑って必要な検査を行うべきなどとして損害賠償訴訟を提起した結果,第1審の地方裁判所は,頭蓋内圧亢進症を疑うべき事情はないとして医療機関の過失を否定したが,第2審の高等裁判所は,頭蓋内圧亢進症を疑ってCT検査を実施するべきであったとして遺族の請求を一部認容した(東京高等裁判所平成30年3月28日判決)