医療裁判紹介バックナンバー
医療裁判:光線療法の適応基準に関する医師の裁量
2013年05月02日
        胎児仮死のため帝王切開で出生した患児(出生時は1824gの未熟児)が大学病院のNICUへ搬送された。出生から約7時間後に皮膚色に黄色が入るようになり,約14時間後に総ビリルビン値が9.4mg/dl,約16時間後には9.2mg/dlとなるも,担当医師達は「村田の基準」を満たしていない,数値の低下が見られる等を理由に光線療法を行わなかった。その後,患児に痙攣等の症状が発現し,総ビリルビン値が12.0mg/dlになった段階で光線療法を開始したが,後日,アテトーゼ型脳性麻痺の後遺症を遺した…(大阪地方裁判所平成23年2月18日判決)
            
        医療裁判:消化管穿孔による腹膜炎患者に対する夜間救急外来での対応
2013年05月01日
        過去の脳出血の後遺症のため,体幹機能障害で立位困難,発語困難な男性(当時76歳)が夜に腹痛を訴え,救急車搬送により公立病院の救急外来を受診した。診察に当たった医師は腹部を触診したが明らかな所見は無く,各種検査の結果も正常範囲であったこと,また腹部仰臥位X線画像でも所見が無かったことから,点滴を投与したうえで3時間経過観察をした後,帰宅可能と判断した。しかし,男性の状態が苦しそうであったため…(名古屋地方裁判所平成23年1月14日判決)
            
        医療裁判:医師の言動が不法行為を構成するとされた事案
2013年04月02日
        自律神経失調症の診断を受け,クリニックの心療内科を通院していた男性が,職務担当の変更を契機に状態が悪化し,休職,自宅療養となった。その後,治療の甲斐あって職場復帰の目処が立つまでに状態が回復したところ,上司の薦めで産業医との面談が行われた。しかし,面談の場での産業医の言動により,かえってAの症状は悪化し,その結果,復職が遅れることとなった…(大阪地方裁判所平成23年10月25日判決)
            
        医療裁判:自ら収集した医学的知見に基づく主張をする患者に対する説明
2013年04月01日
        化学物質過敏症の男性がインレー離脱のため再合着治療を受けたが,動悸などの体調不良が続いたため,別の歯科医院を紹介された。紹介された歯科医院にて男性はフィットシールの除去,フジリュートおよびベースセメントが残存していた場合の除去,リン酸亜鉛セメントの使用が可能かどうかのテスト等を希望した…(東京地方裁判所平成23年4月28日判決)
            
        医療裁判:医療事故後に誓約書に基づき入院継続する患者に対する病院の対応
2013年03月02日
        胆のう結石ないし胆管結石の疑いで入院した女性が,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)および十二指腸乳頭切開術(EST)および内視鏡的胆 道排石術を受けた。しかし,この内視鏡的胆道排石術の際に十二指腸の穿孔が生じる医療事故が発生。医療事故発生後,担当医師は女性に対し絶食,補 液,抗生剤投与,さらに,治療途中に生じた深在性真菌症に対する治療を行った…(千葉地方裁判所平成22年12月24日判決)
            
        医療裁判:精密検査を受診させるための転医義務
2013年03月01日
        胃部不快感等を訴えて,男性(当時50歳)がクリニックを受診した。診察した医師は胃または腸の潰瘍炎症,悪性病変を疑い,男性に対して上部消化 管造影検査を実施。検査の結果を所属する医師会の読影会の検討にもかけ,医師は胃潰瘍の可能性が高いと診断した。しかし数ヵ月後,男性が蕁麻疹の ため受診した他のクリニックで上部消化管内視鏡検査を実施したところ,胃癌が疑われ…(名古屋地方裁判所平成19年7月4日判決)
            
        医療裁判:カルテ開示義務違反と損害賠償
2012年06月01日
        本件は、O歯科医師が開設するH歯科クリニックでインプラント治療を受けたA(当時45歳男性)が、O歯科医師に従前の診療経過に関する説明およびAのカルテの開示を求めたにも関わらず、O歯科医師がこれを拒否したと主張して、O歯科医師に対し、診療契約の債務不履行または不法行為に基づき損害賠償を求めたところ、慰謝料として20万円が認定された事案である。(東京地方裁判所平成23年1月27日判決)
            
        医療裁判:患者本人を診察しないで行う治療
2012年04月01日
        本件は,患者Aが精神科医O医師に対して,Aを診察せず親族の話を聞いただけで統合失調症妄想型と診断して水薬を処方したことは,医師法第20条に違反する行為であり,Aの人格権が侵害されたとして損害賠償請求を求めた事案である。(千葉地方裁判所平成12年6月30日判決)
            
        医療裁判:生検を受けるか選択判断する自己決定権
2012年03月01日
        H大学I病院O医師が,患者A(男性,大正15年生まれ)に右仮声帯の腫脹と嗄声の持続を確認した場合には,速やかに喉頭癌の確定診断をしたうえで放射線治療を開始すべき義務があることを前提として,生検を受けるか否かを決定する患者の自己決定権を侵害したとして200万円の慰謝料が認められた事例。(東京地方裁判所平成23年3月23日判決)
            
        医療裁判:医療事故に関する病院側のコメントと名誉毀損の成否
2012年02月02日
        本件は,H病院の担当職員が,新聞社に情報を提供して,新聞社の発行する日刊紙に,Aの名誉を毀損する記事を掲載させたことにより精神的損害を被ったとして,Aが,その職員の使用者であるH病院に対し,不法行為に基づく損害賠償を求めた事件である。(東京地方裁判所平成23年5月31日判決)
            
        
