ADHD治療薬の長期服用は高血圧・動脈疾患リスクか:スウェーデン
Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Medications and Long-Term Risk of Cardiovascular Diseases
背景
注意欠如・多動症(ADHD)の診断は過去数十年で大幅に増加しており、ADHD治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、重大な心血管疾患(CVD)との関連は不明である。
スウェーデンKarolinska InstitutetのZhangらは、2007〜2020年にADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD用の精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキサンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)いずれかの処方を受けた6〜64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓・動脈疾患・その他)の関連を調査した(n=278,027)。
結論
CVDを発症した10,388名が、CVD発症のなかった51,672名とマッチングされた(フォローアップ期間中央値4.1年)。
非使用の場合と比較したCVDリスクは、ADHD治療薬の使用期間が長いほど増加しており、使用期間1年以内では調整オッズ比0.99、3〜5年では1.27、5年超では1.23であった。ADHD治療薬の長期使用は高血圧(5年超での調整オッズ比1.80)、動脈疾患(1.49)のリスク増加と関連した。14年のフォローアップ期間全体では、ADHD治療薬の使用期間が1年延長するごとにCVDリスクが4%増加しており、最初の3年に限れば8%とより大きなリスク増加が見られた。
評価
同チームによって行われた既存研究のメタアナリシスでは関連は認められなかったものの、スウェーデン全国コホートでの長期的評価により、ADHD治療薬が高血圧・動脈疾患のリスクと関連することを明らかにした。
ADHD患者に困難なトレードオフを迫る気がかりな結果であり、さらなる調査が必要である。