ICUにおける赤血球輸血の世界的実態は:InPUT研究
Red Blood Cell Transfusion in the Intensive Care Unit
背景
近年、重症患者集団における複数のRCTが、より制限的なヘモグロビン閾値による輸血戦略の安全性を示唆しているが、こうしたエビデンスが現実の輸血管理にどのような影響を与えているのかは定かでない。
オランダAmsterdam University のRaasveldらは、2019年3月から2022年10月にかけて6大陸30ヵ国233のICUに入室した成人患者を対象に、ICU滞在中の赤血球輸血を調査する国際共同前向コホート研究を実施した。
結論
3,643名の患者が含まれた。
25%の患者が1単位以上の赤血球輸血を受け、1人あたりの輸血単位は中央値2単位であった。輸血患者の割合は施設単位では0%〜100%、国単位で0%〜80%、大陸単位でも19%〜45%とばらつきがあった。
赤血球輸血(n=1,727)の臨床適応は、ヘモグロビン低値が81.8%(輸血前最低値の平均7.4 g/dL)、活動性出血が27.7%、血行動態不安定が23.5%であった。輸血の生理学的トリガーが記録されていたイベントでは、低血圧(42.2%)、頻脈(27.4%)、乳酸値の上昇(17.8%)が最も一般的なトリガーであった。
ICUの84%は、ヘモグロビン値中央値が7 g/dL超の患者に輸血を行っていた。
評価
ICU患者での輸血の実態調査としては2012年のICON studyがある。
本研究での輸血前ヘモグロビン値はそれよりも低下していたものの(8.3 g/dL vs. 7.7 g/dL)、輸血実践には世界的に大きなばらつきがあり、依然として多くの輸血が推奨閾値以上で行われていた。