COVID-19重症患者でのシンバスタチンのベネフィットは:REMAP-CAP
Simvastatin in Critically Ill Patients with Covid-19
背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期には、抗ウイルス薬のレムデシビル・アビガン・リウマチ薬のバリシチニブなど、既存薬の転用(ドラッグ・リポジショニング)が積極的に試みられた。シンバスタチンは、モデル実験において呼吸器疾患での炎症を軽減することが示されており、COVID-19患者を対象とした観察研究でも、死亡率低下との関連が示唆されていた。
ニュージーランドMedical Research Institute of New ZealandのHillsらは、市中肺炎を対象とした国際共同・適応的プラットフォーム試験REMAP-CAPにおいて、新型コロナウイルス感染症の重症患者に、シンバスタチン(1日80 mg)またはスタチン非投与を割り付け、21日目までの呼吸器・心血管サポートの不要な生存日数を比較するRCTを実施した。
結論
COVID-19症例の減少に伴い、優越性・無益性の停止基準を満たさない可能性が高まったため、2023年1月に登録を終了した。
最終解析(n=2,684)では、臓器サポートの不要な生存期間(中央値)は、シンバスタチン群で11日、対照群で7日であった。調整オッズ比は1.15であり、シンバスタチンの優越性の事後確率は95.9%であった。90日生存のハザード比は1.12であり、シンバスタチン優越性の事後確率は91.9%であった。
評価
REMAP-CAPで行われたもう一つの検証(https://doi.org/10.1001/jama.2023.21407)と同時に発表された。事前指定のベネフィットの基準には達しなかったものの、これは試験が中途終了せざるを得なかったためと思われ、シンバスタチンが優越する確率は90%を超えていた。著者らは事前指定基準未達を強調しているが、臨床現場での重症COVID-19患者への使用は合理的選択肢の一つとみなされ続けるとみられる。