迅速導入気管挿管でのケタミン投与量を減らしても低血圧リスクは減らない?
Sedative Dose for Rapid Sequence Intubation and Postintubation Hypotension: Is There an Association?
背景
迅速導入気管挿管(RSI)では、低血圧のリスクをどのように低減するかが積年の課題となっており、鎮静薬と、その投与量が修正可能な変数として検討されてきた。血行動態が不安定な患者においては、低用量での鎮静が提案されているが、こうした方針を支持するデータは少ない。
アメリカHennepin County Medical CenterのDriverらは、National Emergency Airway Registryの2016〜2018年のデータを解析し、初回挿管試行におけるエトミデート・ケタミンの体重あたり投与量と挿管後の低血圧(収縮機血圧100 mmHg未満)との関連を検討した。
結論
エトミデートが用いられた12,175件、ケタミンが用いられた1,849件の挿管が解析に含まれた。投与量の中央値は、エトミデートで0.28 mg/kg、ケタミンでは1.33 mg/kgであり、エトミデート投与患者の16.2%、ケタミン投与患者の29.0%で挿管後低血圧が発生した。
多変量モデルでは、エトミデートの投与量(調整オッズ比 0.95)、ケタミンの投与量(0.97)とも挿管後低血圧とは関連しなかった。挿管前の低血圧患者を除外、あるいはショック患者のみを含む感度解析においても結果は同様であった。
評価
アメリカで最も一般的なエトミデート、循環不安定な患者で選択されることの多いケタミンともに、投与量と低血圧のリスクに関連はみられなかった。これら2薬剤については、投与量を減らすことで低血圧リスクを減らすことはできないと考えるべきである。