漢方薬が急性心筋梗塞による心臓死亡を3割減少させる:CTS-AMI
Traditional Chinese Medicine Compound (Tongxinluo) and Clinical Outcomes of Patients With Acute Myocardial Infarction: The CTS-AMI Randomized Clinical Trial
背景
漢方薬は、西洋医学とは全く異なる理論に従う薬物療法であるが、近年、特に中国で漢方薬治療におけるエビデンスの構築が進んでいる。
中国Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのYangら(CTS-AMI)は、高麗人参・全蝎(サソリ)・水蛭(ヒル)・シナゴキブリ・蜈蚣(ムカデ)・蝉退(セミの抜け殻)・赤芍・竜脳香からなる漢方、Tongxinluoカプセル(通心絡胶囊)の効果を検証するため、同国124施設の発症24時間以内のST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者を、Tongxinluoまたはプラセボへと割り付け、30日以内の重大心・脳血管有害イベント(MACCE)率を比較するRCTを実施した(n=3,797)。
結論
30日以内のMACCE率は、Tongxinluo群で3.4%、対照群で5.2%であった(相対リスク 0.64)。30日以内の心臓死についてもTongxinluo群で有意に低下していた(3.0% vs. 4.2%, 相対リスク 0.70)。1年MACCE率、1年心臓死亡率でも同様の結果が認められた。
有害副作用はTongxinluo群で多く(2.1% vs. 1.1%)、主に消化器症状によるものであった。
評価
Tongxinluoは90年代に承認され、中国の必須医薬品の一つでもある心血管疾患の治療薬である。STEMI患者での心臓死イベントが30%減少、という本試験の結果は、AHAの会場から感嘆と当惑をもって迎えられたという。他国でこの結果が再現されるかは不明であるものの、十分解明されているとは言えないその薬理作用も含め、大いに興味をかき立てられるポジティブな結果である。