血栓リスクの低いがん患者では血栓予防療法は不要か:TARGET-TP
Risk-Directed Ambulatory Thromboprophylaxis in Lung and Gastrointestinal Cancers: The TARGET-TP Randomized Clinical Trial
背景
薬物療法を受けるがん患者では血栓予防の有効性が示されているが、抗凝固療法による出血リスクもあり、すべての患者で予防を実施することは合理的でない。
オーストラリアPeter MacCallum Cancer CentreのAlexanderら(TARGET-TP)は、肺がん・消化器がんにより抗がん剤治療を開始する成人患者において、フィブリノゲンとd-dimerにより血栓塞栓症リスクを評価し、高リスク患者をエノキサパリンまたは無治療へと割り付け、低リスク患者では経過観察を行うRCTを実施した(n=328)。
結論
登録患者の61%が高リスク、残りが低リスクに分類された。
高リスク患者での180日以内の血栓塞栓症は、エノキサパリン群の8%、対照群の23%で発生した(HR 0.31)。一方で、低リスク患者での血栓塞栓症発生率は8%であった。大出血の発生率は低く、高リスク患者のエノキサパリン群1%、対照群2%、低リスク患者2%で発生した。6ヵ月死亡率はエノキサパリン群で13%、対照群で26%(HR 0.48)、低リスク患者では7%であった。
評価
AVERT試験・CASSINI試験と同様、血栓リスクにより治療をターゲット化した試験で、高リスク患者で血栓発症率・死亡率を大きく抑制しつつ、低リスク患者への介入を回避しうることを示した。