腫瘍細胞内でのみ増殖する腫瘍溶解性ヘルペスウイルスCAN-3110による再発膠芽腫の治療
Clinical trial links oncolytic immunoactivation to survival in glioblastoma
背景
膠芽腫に対する免疫療法の効果が低いのは、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫の強い抑制に起因する。腫瘍溶解性ウイルス療法では、ウイルス増殖による癌細胞溶解よって生じた癌抗原に対する免疫反応を利用して癌を抑制する可能性がある。
アメリカBrigham and Women’s HospitalのLingらは、新規腫瘍溶解性ヘルペスウイルス(oHSV)のCAN-3110を再発悪性神経膠腫患者(n=41)に定位的に1回注入した第1相試験結果を報告している。
結論
けいれん等重篤有害事象は2件のみで、用量制限毒性や脳炎/髄膜炎はなかった。全生存期間(OS)中央値は11.6ヵ月で、従来値(6〜9ヵ月)の約2倍であった(治療前にHSV1抗体陽性であった場合は中央値14.2ヵ月)。OS延長は腫瘍組織と末梢血中のT細胞数の大幅な増加と、その多様性と相関していた。腫瘍組織内ではCD8+とCD4+リンパ球の増加が認められた。
評価
従来の腫瘍溶解性ヘルペスウイルス(oHSV)で欠失させていたICP34.5遺伝子を、ネスチン・プロモーターによって別個に転写・発現するよう遺伝子改変したものである。癌細胞での特異的増殖を保証するユニークな手法で、現在、複数回の局所投与や免疫チェックポイント阻害薬との併用も考えられており、今後の試験結果が待たれる。