多枝病変STEMIへの即時完全血行再建は推奨されうるか:MULTISTARS AMI
Timing of Complete Revascularization with Multivessel PCI for Myocardial Infarction
背景
多枝病変のST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対し、どの時点で非責任病変にまでわたる完全血行再建を行うべきかは、重要で未解決の問題である。
スイスUniversity Hospital ZurichのStähliら(MULTISTARS AMI)は、418名の同患者を対象として、この問題を検証する多施設非劣性RCTを行った。STEMIと多枝冠動脈疾患を有し、血行動態が安定している患者を、即時に完全PCIを行う群(即時群)と、責任病変に対するPCI後19〜45日以内に非責任病変に対しPCI を行う群(段階群)に無作為に割り付けた。一次エンドポイントは、無作為化後1年時点での全死因死亡・非致死的心筋梗塞・脳卒中・虚血に起因する予定外の血行再建・心不全による入院の複合である。
結論
即時完全PCI群の段階的PCI群に対する一次エンドポイント非劣性を認めた(リスク比 0.52, 非劣性のP<0.001, 優越性のP<0.001)。全死因死亡・脳卒中・心不全による入院のリスクは同等であった。重篤な有害事象は、即時完全PCI群で104件、段階的PCI群で145件発生した。
評価
決着のつかなかった問題に対する欧州の多施設検証だが、試験のデザインもあり、「非劣性だが、優位性に関しては、またもや問題含み」という微妙な結果をもたらした。中立的な現在のガイドラインを変更しうる結果とはみなし難く、実践的には「ケースバイケース」ということになる。


