急性脳卒中での早期遠隔臓器血流遮断(Remote Ischemic Conditioning)は無効:RESIST
Remote Ischemic Conditioning for Acute Stroke: The RESIST Randomized Clinical Trial
背景
虚血耐性獲得は、軽度の虚血負荷によって、その後の長時間虚血に対する内因性耐性が獲得される現象である。近年、脳虚血が生じた後や、脳から離れた四肢の虚血負荷でも同様の神経保護効果が確認されるに至り、遠隔臓器血流遮断(Remote Ischemic Conditioning)として臨床的な応用が進んでいる。2022年には、中国のRICAMIS試験が有効性を示唆する結果を示した(https://doi.org/10.1001/jama.2022.13123)。
デンマークAarhus University HospitalのBlauenfeldtら(RESIST)は、同国4ヵ所の脳卒中センターで、脳卒中症状を有する病院到着前の患者を対象として、上肢に取り付けた膨張式カフを5分間隔で5サイクル膨張・収縮させ(RIC群ではカフ圧≦200 mmHg, 対照群では20 mmHg)、90日後の修正ランキンスケール(mRS)を比較するRCTを実施した(n=1,500)。
結論
試験完了患者の10%は一過性脳虚血発作、27%はstroke mimicと診断された。残る解析対象患者(n=902)の82%が虚血性脳卒中、18%が頭蓋内出血であった。
90日時点での各群mRSスコアの中央値は、RIC群で2、対照群で1であり、RICは機能的アウトカムの改善とは関連しなかった(オッズ比 0.95)。
評価
RICAMISの探索的解析は、早期RICによる高い効果を示しており、病院前からの介入を行ったRESISTにも期待が集まっていたが、機能的アウトカムの改善は認められなかった。脳卒中急性期でのRICについては、日本のRICAISを含め(UMIN000046225)、さらに複数の試験が行われている。