ICU患者での厳格な血糖コントロール、やはりベネフィットは無し:TGC-Fast
Tight Blood-Glucose Control without Early Parenteral Nutrition in the ICU
背景
ICU患者の高血糖は予後不良と関連しているが、厳格な血糖コントロール(TGC)にベネフィットはあるのか? 2001年のLeuven I試験がベネフィットを示して以降、多くの臨床試験が行われたが、最大規模のNICE-SUGAR試験がTGCによる死亡率上昇を示したことが決定打となり、現在では、よりマイルドな血糖コントロールが主流となっている。
ベルギーUniversity Hospitals of KU LeuvenのGunstら(TGC-Fast)は、ICUに入室する患者を、血糖値215 mg/dlを超えた場合のみでインスリンを開始するリベラル血糖コントロール(LGC)群と80-110 mg/dlを目標とするTGC群へと割り付け、ICU入室期間を比較する多施設ランダム化比較試験、TGC-Fastを実施した(n=9230)。
本試験では、両群とも静脈栄養が1週間差し控えられた。
結論
早朝血糖値(中央値)はLGC群で140 mg/dl、TGC群で107 mg/dlであった。重度の低血糖(<40 mg/dl)はLGC群の0.7%、TGC群の1.0%で発生した。
ICU治療必要期間に群間差はなかった。90日死亡率もLGC群10.1%、TGC群10.5%と差がなかった。事前指定された8つの二次アウトカムのうち、重篤な急性腎障害・胆汁うっ滞性肝機能障害はTGC群で少なかった。
評価
初期の単施設試験の時代においては、早期静脈栄養が一般的に行われており、このことが高血糖を有害化し、TGCのベネフィットに繋がっていたのではないか、との仮説に基づき、Leuven I試験のKU Leuvenチームによって主導された再検証である。
現在の臨床セッティングにおいてTGCにメリットがないことを確認し、20年にわたる論争に終止符を打つ結果である。