代謝スイッチによる心筋再生は可能、鍵はαKGとKDM5
Inhibition of fatty acid oxidation enables heart regeneration in adult mice
背景
心筋細胞は、胎児型の解糖系から成熟型脂肪酸酸化系へのエネルギー代謝スイッチを切り替えた後には、虚血再灌流等の損傷を受けても再生が不可能となる。
ドイツMax Planck Institute for Heart and Lung ResearchのLiらは、マウス実験系により、脂肪酸酸化系の抑制・不活化が成熟心筋細胞を増殖可能な心筋細胞へ脱分化させる、という仮説を検証した。
結論
このような表現型変化を確認し、その起因遺伝子Cpt1bを同定した。Cpt1b欠損マウスでの高度細胞増殖と心肥大を証明した。さらに、このようなトランスジェニック表現型が、タモキシフェン投与によるCpt1bのスイッチオフによっても誘導されること、またその効果の媒介因子がαケトグルタル酸(αKG)およびαKG依存性lysine-demethylase 5A (KDM5A)であることが明らかになった。
評価
心筋代謝スイッチの脂肪酸酸化系から解糖系への切り替えが成熟心筋を再生させうるという、先行示唆を確実性にもたらした重要な実験である。さらに、αKGとKDM5というスイッチ標的系も同定しており、創薬に直接関連する。