宇宙滞在中の心臓萎縮は運動で抑制できる
Cardiac Effects of Long-Duration Space Flight
背景
宇宙に一定期間滞在する宇宙飛行士では、心仕事量がそれほど必要とされない無重力状態への適応として、心臓の構造・機能に変化が生じる。
アメリカTexas Health Presbyterian HospitalのShibataらは、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士で、日課とされる現行の運動対策が長期宇宙滞在による心筋萎縮を相殺しうるか、磁気共鳴画像法(MRI)による左室・右室の測定によって検討した。
結論
女性4名、男性9名の宇宙飛行士において、ISS滞在(155±31日間)の75〜60日前時点と3日後時点の左室・右室の質量・体積が測定され、さらに飛行21〜7日前からミッション終了15日前までの総心仕事量が評価された。
心仕事量は宇宙滞在中に低下したが、左室質量には飛行前後で有意差はなく、左室1回拍出量・駆出率は飛行後でわずかに高かった。右室の質量、駆出率、拡張末期・収縮末期容積に差はなかった。左室質量の変化と心拍出量・心仕事量の変化には正の相関があった。
評価
ISSで現在行われているトレッドミル、エアロバイクなどによる運動は、心仕事量の低下に伴う心臓萎縮をある程度まで緩和、相殺した。来るべき宇宙時代には、より長期のミッションが一般化すると考えられ、運動プロトコルの効果はさらに詳細化される必要がある。

