輸血を通じてドナーの脳内出血リスクがレシピエントに引き継がれる?
Intracerebral Hemorrhage Among Blood Donors and Their Transfusion Recipients
背景
脳アミロイド血管症は、認知的に問題のない高齢者でも5%以上に認められる、高血圧に次ぐ特発性脳内出血(ICH)の原因であるが、2015年のNature論文は、これが伝染性である可能性を示唆している(https://doi.org/10.1038/nature15369)。
スウェーデンKarolinska InstitutetのZhaoらは、スウェーデンの759,858名からなる一次コホート、デンマークの329,512名からなる検証コホート、および両国で1970年以降、赤血球輸血を受けた5〜80歳の全患者1,089,370名において、単回または複数回の特発性ICHを発症したドナーから赤血球輸血を受けた患者で、特発性ICHリスクが増加するかを探索的に検証した。
結論
特発性ICHを複数回発症したドナーから輸血を受けた患者では、特発性ICHを発症するリスクが有意に高かった(スウェーデンコホートの調整ハザード比 2.73, デンマークのハザード比 2.32)。一方、特発性ICHを1回だけ発症したドナーから輸血を受けた患者では、特発性ICHリスクの増加は認められなかった。
また、虚血性脳卒中についても有意な差は認められなかった。
評価
ドナー・レシピエント歴も含めてすべての医療記録が電子化されているスウェーデン・デンマークでのみ可能な研究で、複数回のICH発症歴のあるドナー(脳アミロイド血管症が疑われる)から赤血球輸血を受けた患者では、ICHリスクが増加するという驚くべき関連を明らかにした。
脳梗塞については関連がみられなかったことも含め、脳アミロイド血管症の伝染性を示唆する結果で、機序の掘り下げが望まれる。


