がん検診による余命の延長効果は最大でも3ヵ月?
Estimated Lifetime Gained With Cancer Screening Tests: A Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials
背景
肺がんや大腸がんを対象としたがん検診は、がんによる死亡リスク(疾患特異的死亡率)を低減することが確認されているが、寿命全体、すなわち全原因死亡率への影響はどのようなものだろうか?
ノルウェーUniversity of OsloのBretthauerらは、がん検診による獲得余命を評価する系統的レビュー・メタアナリシスを実施した。対象となったのは、乳がんマンモグラフィ検診、大腸がんの大腸内視鏡・S状結腸鏡・便潜血検査(FOBT)検診、喫煙者に対する肺がんのCT検診、前立腺がんのPSA検診に関して、検診ありとなしを比較し、9年以上のフォローアップにより全原因死亡・推定獲得余命を報告したランダム化比較試験であった。
結論
2,111,958名の患者を登録した、18件の試験が対象となった。フォローアップ期間は、CT検診、PSA検診、大腸内視鏡検診が中央値10年、最も長いS状結腸鏡検診、FOBT検診で15年であった。
検診による余命の有意な延長が認められたのは、S状結腸鏡検診のみであり、その期間は110日であった。マンモグラフィ(0日)、前立腺がん検診(37日)、大腸内視鏡検診(37日)、FOBT検診(0日)、肺がん検診(107日)に有意な差は認められなかった。
評価
サンプルサイズが莫大なものとなるため、通常、がん検診の有効性の指標として全原因死亡が用いられることはないが、このメタアナリシスは死亡を評価することで、検診集団全体の余命に与える影響が存在しないか、存在しても極めてわずかである、という挑発的な結論を引き出した。
全原因死亡をアウトカムとし、長期のフォローアップを要求したため、包含研究が限られている点は大きな制限であるが、寿命への影響を無視すべきでないというメッセージは重要である。併載記事が提案するマルチがん検診のRCTは、このエビデンス・ギャップに対する解決策たり得るかもしれない(https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2023.3781)。

