塩基編集を用いてT細胞ALLへのCAR-T細胞療法が可能に
Base-Edited CAR7 T Cells for Relapsed T-Cell Acute Lymphoblastic Leukemia
背景
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、B細胞性腫瘍の治療に革新をもたらした。しかし、T細胞性腫瘍でT細胞発現するタンパク質を標的とすると、CAR-T細胞の兄弟殺し(fratricide)が引き起こされるため、治療が困難であった。
イギリスGreat Ormond Street Hospital for Children NHS TrustのChiesaらは、健康被験者から採取したT細胞を、CD7特異的CARを発現するよう改変し(CAR7)、つづいてCD52・CD7受容体およびαβ T細胞受容体のβ鎖をコードする3遺伝子を、CRISPRを用いた一塩基編集により不活性化した。作製されたT細胞は、再発T細胞性腫瘍の小児患者に投与され、本論文は最初の3名について報告した。
結論
最初の患者は、13歳の女児で同種幹細胞移植(allo-SCT)後に再発したT細胞急性リンパ芽球性白血病であったが、一塩基置換CAR7(BE-CAR7)の単回投与から28日以内に分子的寛解を達成した。その後、同じドナーから非骨髄破壊的allo-SCTを受け、寛解が持続している。BE-CAR7は続く2人でも強力な活性を示した。13歳の男児では真菌感染症が生じ、死亡した。混合形質性急性白血病の15歳男児では、28日目に完全寛解となり、allo-SCTへと移行した。重篤有害事象として、サイトカイン放出症候群・多血球系血球減少症・日和見感染症があった。
評価
CRISPRを用いた一塩基置換という、高精度な遺伝子編集により、T細胞性腫瘍に対してもCAR-T細胞療法が可能であることを実証した。第1相報告の段階ではあるが、発展が大いに期待される。


