上咽頭がん集団検診のための、EBVに替わる新規バイオマーカーP85-Ab
Anti-Epstein-Barr Virus BNLF2b for Mass Screening for Nasopharyngeal Cancer

カテゴリー
がん、Top Journal
ジャーナル名
The New England Journal of Medicine
年月
August 2023
389
開始ページ
808

背景

上咽頭がんは、中国南部から東南アジア、さらに北アフリカを好発地域とするEpstein-Barrウイルス(EBV)関連がんであり、EBV抗体ベースの集団検診が有効とされているが、EBVエンデミック地域においても陽性適中率は十分高いとはいえない。
中国Xiamen UniversityのLiらは、B細胞エピトープのペプチドライブラリーを構築し、上咽頭がんのための血清学的バイオマーカーを特定する後向ケースコントロール研究を実施した。さらに、そこで特定された新規バイオマーカーを、大規模前向検診プログラムにおいて、2抗体ベース検査(EBV核抗原1 [EBNA1-IgA]、EBV特異的ウイルスカプシド抗原 [VCA-IgA])と比較した。

結論

抗BNLF2bトータル抗体、P85-Abが特定された。上咽頭がん患者71名での検査では、P85-Abの感度は94.4%、特異度は99.6%と、他のバイオマーカーより有望であった。
大規模前向コホート(n=24,852)では47件の上咽頭がん(うち早期38件)が発見された。P85-Abは2抗体法よりも感度(97.9% vs. 72.3%)、特異度(98.3% vs. 97.0%)とも高く、陽性適中率も高かった(10.0% vs. 4.3%)。P85-Abと2抗体法を組み合わせると、陽性適中率は44.6%まで上昇したが、感度は70.2%となった。

評価

新たなバイオマーカーP85-Abは、既存のEBVマーカーを上回る精度を示した。集団検診の効率(yield)を大きく改善することが期待される。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(がん)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Journal of Clinical Oncology (JCO)、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、Cancer Research (Cancer Res)