外傷性脳損傷後の昏睡患者への右正中神経電気刺激が有望か
Acute traumatic coma awakening by right median nerve electrical stimulation: a randomised controlled trial
背景
重度の外傷性脳損傷(TBI)患者の一部は昏睡状態となり、長期的な意識障害のリスクに晒される。昏睡状態からの回復を目指す治療法はいくつかあるが、ICUでの管理が必要な受傷後早期に利用可能なものは少ない。
中国Shanghai Jiao Tong UniversityのWuらは、同国22施設で、TBI後7〜14日時点で急性昏睡を呈する患者を、通常治療に加えて1日8時間、2週間の右正中神経電気刺激(RMNS)を行うグループ、または通常治療のみのグループへと割り付け、6ヵ月時点での意識回復を比較するRCTを実施した(n=329)。
結論
6ヵ月時点での意識回復率は、RMNS群で72.5%、対照群では56.8%であった。3ヵ月時点のGlasgow Outcome Scale Extendedスコア(5 vs. 4, 中央値)、6ヵ月時点のGOSE(6 vs. 4)、28日時点のFull Outline of Unresponsivenessスケール(15 vs. 13)も、RMNS群で有意に高かった。有害事象は両群同等であり、刺激デバイスに関連した重篤有害事象はなかった。
評価
中枢神経系、とくに覚醒に関連する上行性網様体賦活系へのゲートウェイとして正中神経を用いるアプローチで、本論文で謝辞を捧げられているE. Cooperによって長年研究されてきた(https://doi.org/10.1080/026990599121638, https://doi.org/10.1089/neu.2014.3768)。このRCTでは、急性期TBI昏睡患者での回復を有意に改善することを示したが、著者らは、筋肉の動きにより盲検化が不完全に終わったこと、アウトカム評価に主観性の入り込む余地があることから、確認研究が必要としている。