NYUとRevivicor社が遺伝子改変ブタ心臓のヒトへの移植実行可能性を主張
Pig-to-human heart xenotransplantation in two recently deceased human recipients
背景
2022年にRevivicor社による10の遺伝子改変を行ったブタ心臓を初めて移植された非虚血性心筋症患者は、移植心の機能低下により2ヵ月後に死亡した(https://doi.org/10.1056/nejmoa2201422)。
アメリカNew York UniversityのMoazamiらは、同社のヒト移植用ブタ心臓の有用性再評価のために、2名の脳死患者に移植を行い、心機能・拒絶反応・人獣共通病原体などについて66時間の観察を行った。
結論
サイズ不一致による心機能低下が1名で観察されたが、両ブタ心臓は、移植直後からよく機能し、導入遺伝子の発現も確認された。細胞性・液性免疫による拒絶反応の証拠はなかった。また、10のブタウイルス(PCV 1-3・PCMV・PERV A-C,・PLHV 1-3等)やE型肝炎ウイルス・寄生虫卵などを含む感染症の証拠もなかった。
評価
NYUによるRevivicor社の遺伝子改変ブタ心臓のヒト移植は世界に大きな衝撃を与えたが、主要問題として同定されたのは拒絶反応でなく、ウイルスの異種間伝播であった。この論文は、NYUと同社によるそのフォローアップ研究で、感染症リスクは管理可能ではないかと示唆して、異種心移植の実行可能性を再び根拠づけようとしたものである。このプロジェクトを巡る競争は激しく、eGenesis社は来年の臨床試験を目指して「練習」中である、という。eGenesis (https://www.technologyreview.com/2023/07/17/1076392/this-company-plans-to-transplant-pig-hearts-into-babies-next-year/)。