不眠症は脳卒中リスク、50歳未満では最大約4倍
Association Between Insomnia Symptoms and Trajectory With the Risk of Stroke in the Health and Retirement Study
背景
不眠は人口の1〜3割でみられる一般的な疾患であり、心血管リスクとの関連が指摘されてきた。
アメリカVirginia Commonwealth UniversityのSawadogoらは、50歳以上のアメリカ人と、その配偶者を対象としたHealth and Retirement Studyで収集された2002〜2020年のデータから、Brief Insomnia Questionnaireに基づく自己報告不眠症状(入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害)の軌跡と、フォローアップ期間中(平均9年)の脳卒中イベントの関連を調査した(n=31,126)。
結論
参加者の年齢は平均61歳、57%が女性であった。不眠症状の軌跡は経時的に安定していた。不眠のない参加者と比較して、不眠症状スコアが1〜4の参加者(HR 1.16)、5〜8の参加者(1.51)では、脳卒中リスクが増加した。この関連は年齢によって異なり、50歳未満で不眠スコアが5〜8の参加者(3.84)では、50歳以上の参加者(1.38)よりも強固であった。糖尿病・高血圧・心疾患・うつが、この関連を媒介した。
評価
不眠症が多く脳卒中に先行するとした古典的小観察研究があるが(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12187012/)、大規模研究によって、その確度を高めた。特に、ベースとなる脳卒中リスクが小さい50歳未満では、不眠によるリスク増加が大きいというデータは脳卒中予防戦略に重要な示唆をもたらす。