少量の酒が心血管に良いようにみえるのは、ストレス・不安を軽減するから?
Reduced Stress-Related Neural Network Activity Mediates the Effect of Alcohol on Cardiovascular Risk

カテゴリー
循環器
ジャーナル名
Journal of the American College of Cardiology
年月
June 2023
81
開始ページ
2315

背景

大量飲酒が心血管リスクを上昇させることは広く認められているが、少量飲酒については、リスクを上げるとする研究、リスクを下げるとする研究が、共に存在する状況が続いている。
アメリカYale School of MedicineのMezueらは、Mass General Brigham Biobankに登録され、健康行動調査を完了した個人、および18F-FDGポジトロン断層法(PET)撮影を実施したそのサブセットにおいて、アルコール摂取量と主要有害心血管イベント(MACE)、およびPET評価されたストレス関連ニューラルネットワーク活動(SNA)との関連を検討した(n=53,064)。

結論

フォローアップ期間中央値3.4年で、1,914名がMACEを発症した。週1杯未満の場合と比して、週1〜14杯の軽・中等度飲酒はMACEリスクの低下と関連した(HR 0.786)。SNA評価を受けた参加者では、軽・中等度飲酒はSNAの低下と関連しており(標準化β, −0.192)、SNAの低下がMACEリスク低下を部分的に媒介した(log OR, −0.040)。不安の既往がある個人では、既往が無い個人に対して軽・中等度飲酒はMACEリスクのより大きな低下と関連した(HR 0.60 vs. 0.78)。

評価

飲酒量と心血管リスクを検証した既存研究では、しばしば少量飲酒者ではリスクが低下するというU字型の相関が示されてきた。本研究は、この少量飲酒のパラドックスが不安・ストレスという因子によって説明される可能性を示唆した点で興味深い。とはいえ、この研究から引き出すべきメッセージは、少量飲酒の推奨ではなく、飲酒によらないストレスの軽減であろう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)