ヒト心臓の3D単一細胞トランスクリプトミクス
Spatially resolved multiomics of human cardiac niches
背景
ヒト心臓の単一細胞トランスクリプトミクスの最初の本格研究が発表された。
イギリスWellcome Sanger InstituteのKanemaruとCranleyらによるもので、ヒト心臓の8領域(RA・LA・RV・LV・SP・AX・SAN・ AVN)において、特に電気解剖生理学と免疫学にフォーカスした3D単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。
結論
刺激伝導系の単一細胞トランスクリプトーム解析により、ペースメーカ表現型におけるイオンチャネル・GPCRs・調節ネットワークレパートリー・FOXP2の発現が明らかとなった。SA結節では、ペースメーカ細胞・線維芽細胞・NGF発現グリア細胞が形成するコア集団がグルタミン酸作動性シグナル伝達に寄与すること、また心外膜では、IgG・IgA産生形質細胞が豊富に存在する免疫ニッチが存在することも示された。これら細胞レベル解析に基づき、薬理標的の予測ツールDrug2cellを開発した。
評価
ヒト全細胞の単一細胞トランスクリプトーム解析を目指す国際Human Cell Atlasプロジェクトの心臓バージョンである。新手法により斬新な知見をもたらしており、刺激伝導系におけるグリア細胞の重要性の指摘、心外膜における免疫・内分泌ニッチの同定、創薬ツールDrug2cellの提示が注目点である。この報告は序章というべきものであろう。