緊急挿管を受けた救急患者の7%に挿管中の記憶がある
Recall of Awareness During Paralysis Among ED Patients Undergoing Tracheal Intubation
背景
挿管時・挿管中の鎮静が適切に行われなかった場合、患者が「意識はあるが動けない(Awareness With Paralysis)」状態を記憶しているという事例が発生する場合がある。救急やICUでの緊急気管挿管では、手術室での挿管よりも高頻度で、この金縛り状態が生じるという報告がある。
アメリカHennepin County Medical CenterのDriverらは、前向収集された品質改善データベースを分析し、救急外来での緊急気管挿管の導入に筋弛緩薬を投与された患者(n=886)において、AWPの有病率および関連する臨床変数を調査した。
結論
AWPを経験・記憶していた可能性がある患者は61名、確実に経験・記憶していた患者は5名であった(計66名, 7.4%)。挿管前の意識レベルの低い患者では、AWPの確率も低かった(オッズ比 0.39)。一報で、使用された筋弛緩薬のクラス、鎮静薬、挿管前のショック指数、挿管後の鎮静はAWPと関連しなかった。
評価
ED-AWARENESS研究では2.6%でAWPが認められたが(https://doi.org/10.1016/j.annemergmed.2020.10.012)、本研究はより多くの患者でAWPが発生している可能性を示唆した。AWPはPTSDとの関連も指摘されており(https://doi.org/10.1213/ANE.0b013e3181b8b6ca)、筋弛緩中に適切な鎮静・鎮痛が行われるよう注意を払う必要がある。