心不全にエピジェネティックレギュレーターTET2が関与
Tet2-Mediated Clonal Hematopoiesis Accelerates Heart Failure Through a Mechanism Involving the IL-1β/NLRP3 Inflammasome
背景
加齢による心不全リスク増に関して新しい免疫炎症論的視点を提示する研究が報告された。Boston UniversityのSanoらによるもので、心不全発現におけるエピジェネティックレギュレーターTET2(特に高齢者のクローン造血血球において頻繁に変異)の役割を検討した。マウスレベルで、TET2欠乏・ablationが心不全の病態形成に寄与する、という仮説を検証した。
結論
圧負荷・冠結索両心不全モデルにおいて、TET2の欠乏・ablationは心筋機能・リモデリングを劣化させ、これにはインターロイキン-1beta(IL-1β)発現増が並行しいていた。他方、選択的NLRP3 inflammasome阻害剤(IL-1βを低減する)処置によりTET2関連心不全の発現は防護され、野生型マウスとの間に心臓パラメータの差はなくなった。
評価
造血系・骨髄性細胞(特に単核球)の心血管作用研究という新しい流れに乗る前臨床研究である。動脈硬化性炎症へのTET2の関与が報告されているが、心不全における報告は初めてである。TET2異常による心不全悪化がIL-1βを介するものであることを示して、canakinumabの心不全への応用可能性も示唆している。TET2の効果にはIL-1βを介さない経路もありえる。