心不全患者へのSac/Val治療でのeGFR低下は一過性、懸念の必要なし
Variation in Renal Function Following Transition to Sacubitril/Valsartan in Patients With Heart Failure
背景
心不全患者がARNI(Sac/Val)治療に移行した場合、腎機能低下が起こることのあることが報告されている。
アメリカBrigham and Women's HospitalのSolomonらは、PARADIGM-HFおよびPARAGON-HFにおいて、Sac/Val投与開始後のeGFR低下(15%以上)の発生、およびその後の心血管アウトカム・治療効果との関連を評価する後向分析を行った。
結論
PARADIGM-HFでは11%、PARAGON-HFでは10%の参加者が、Sac/Val治療への移行でeGFR15%以上の低下を経験していた。しかし、いずれの試験においても、初期のeGFR低下と臨床アウトカムとの間に関連はなく、一次アウトカムに関するSac/Valの治療効果は、eGFRの低下幅にかかわらず、一貫していた。
評価
Sac/Valへのスイッチで挙げられていた懸念を払拭する大規模分析結果である。著者らは、Sac/ValでeGFRが低減する患者はRASiでも低減している場合が多いことを付記し、「RASiで中〜重症腎応答不良があったことは、Sac/Val試行を思いとどまらせる理由にはならない」としている。