心停止後昏睡患者への水素ガス吸入は有望:日本
Efficacy of inhaled hydrogen on neurological outcome following brain ischaemia during post-cardiac arrest care (HYBRID II): a multi-centre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial
背景
水素分子(H2)の吸入は細胞の酸化ストレスを軽減することが報告されており、特に心停止から蘇生後の虚血再灌流障害を緩和することから、心停止後患者でのH2吸入の検証が進んできた。
日本Keio University (慶應義塾大学)のTamuraらは、国内15施設の心原性院外心停止後昏睡患者(20〜80歳)を、18時間の酸素吸入+2%水素または酸素のみへと割り付け、90日後の脳機能的良好アウトカム(CPC 1-2)率を比較するランダム化比較試験HYBRID IIを実施した。
結論
COVID-19に伴う登録制限により試験は早期に終了した。429名がスクリーニングされ、73名が登録された。90日良好アウトカム率は、H2群で56%、対照群で39%であった(相対リスク 0.72, 非有意)。修正ランキンスケール(mRS)の中央値は、H2群が1、対照群は5であった。まったく後遺症状のないmRS 0は、H2群の46%、対照群の21%で達成された。90日生存率はH2群85%、対照群61%であった。
評価
このテーマを追求してきた(https://doi.org/10.1161/JAHA.112.003459, https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.114.011848)慶應大学が中心となって行われたRCTであり、目標に大きく満たない登録数で終了したためか、一次アウトカムの統計的有意差には至らなかったものの、副次アウトカムを含め、H2吸引の有効性が強く示唆された。追加のRCT検証を正当化する結果である。


