ICUは循環型社会の一部となりうるか
Circular material flow in the intensive care unit-environmental effects and identification of hotspots
背景
現在、環境に配慮し、持続可能な循環型社会(サーキュラーエコノミー)への転換が求められており、CO2排出量の6〜7%を担っていると推定される医療部門も例外ではあるまい。
オランダErasmus MCのHunfeldらは、2019年の同施設ICU(年間入室患者数2,839名)におけるマテリアルフロー分析、マテリアルの環境フットプリント分析、環境ホットスポットの特定を行った。
結論
マテリアルフロー分析では1年間の物質流入量は247,000 kgであり、うち50,000 kgは(有害な)医療廃棄物として焼却された。患者ひとりの1日あたりの環境負荷は、物質17 kg、CO2相当量12 kg、水使用300 L、農地占有面積4 m2と算定された。環境ホットスポット(環境への影響が大きい領域)として、非滅菌手袋、防護ガウン、ベッドライナー、サージカルマスク、注射器(包装を含む)が特定された。
評価
ICUのマテリアルフローを調査し、集中治療領域の環境負荷の実態を可視化する先駆的研究である。医療にディスポ製品(多くは最終的に焼却処理される)が溢れているのには相応の理由があり、直ちに改善することは難しいと考えられるが、将来に向けた出発点となる分析である。