バイオマーカーでHFrEFとHFpEF発症を識別予測できるか
Association of Cardiovascular Biomarkers With Incident Heart Failure With Preserved and Reduced Ejection Fraction
背景
心不全の駆出率減少型(HFrEF)と駆出率維持型(HFpEF)を識別し得るバイオマーカーが求められている。オランダUniversity of Groningenのde Boerらは、FraminghamやMESAなどの代表的な4コホート研究集団のデータに基づき、12の心血管バイオマーカーとHFpEF・HFrEFとの関連を評価した(n=22,756、追跡期間中央値12年)。
結論
心不全の臨床リスク因子調整後、2つのバイオマーカー(UACR:HR:1.33、ナトリウム利尿ペプチド[NP]:HR:1.27)がHFpEF発症と有意に関連しており、hs-Tn(HR:1.11)・PAI-1(HR:1.22)・フィブリノーゲン(HR:1.12)は関連が示唆された。対照的に、6つのバイオマーカー(NP:HR:1.54、UACR:HR:1.21、hs-Tn:HR:1.37、シスタチンC:HR:1.19、Dダイマー:HR:1.22、CRP:HR:1.19)は、HFrEF発症に関連していた。NP・hs-Tn・CRPは、HFpEFよりHFrEFと強く関連していた。
評価
大規模な高信頼度データであり、「Il-6・PAI-1・フィブリノーゲン等多くのマーカーが識別に役立たない」という有用なネガティブ結果も提示している。今回の結果を基にしたスコアシステムが期待されるが、著者らはこの分野の途上性を強調しており、時期尚早かもしれない。