低リスク甲状腺乳頭がんアクティブサーベイランスの許容限界は?
Expanded Parameters in Active Surveillance for Low-risk Papillary Thyroid Carcinoma: A Nonrandomized Controlled Trial

カテゴリー
がん
ジャーナル名
JAMA Oncology
年月
September 2022
8
開始ページ
1588

背景

低リスク甲状腺乳頭がんに対する非手術によるアクティブサーベイランス(AS)は、アメリカ甲状腺学会(ATA)ガイドラインに採用され、世界的にも受容されつつあるが、その実行可能性の限界はどこにあるのか。
アメリカCedars-Sinai Medical CenterのHoらは、2014〜2021年に同施設で治療を受けた20 mm以下の甲状腺結節患者257名のうち、222名を登録し、AS(5 mmまたは100%以上増大した場合には手術を推奨)、または即時の手術のいずれかを行う前向非ランダム化対照試験を実施し、ASが実行可能な範囲および患者の不安への影響を評価した。

結論

50.5%がASを受けた。AS患者の腫瘍サイズ中央値は11.0 mm、10.1〜20.0 mmの腫瘍が59.8%を占めた。90.1%がASを継続し、41.0%では腫瘍の縮退がみられた。局所・遠隔転移はなかった。5 mm超の腫瘍増大は3.6%で、100%超の腫瘍増大は7.1%で認められた。即時手術を受けた患者の19.1%は、病理検査において境界病変equivocal-riskと考えられた。甲状腺がん特異的生存率・全生存率は、AS群・手術群とも100%であった。不安のレベルは、ベースライン時、4年のフォローアップ後とも即時手術群で高かった。

評価

この単施設前向研究では、最大20 mmまでの患者で安全にASが実施可能であった。日本では90年代から実践が始まっているAS戦略だが、患者選択には施設間のバラツキも多いとされる。こうしたデータの蓄積は、AS戦略の拡大と標準化に役立つだろう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(がん)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Journal of Clinical Oncology (JCO)、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、Cancer Research (Cancer Res)