ECMOでも「肥満のパラドックス」か
Impact of BMI on outcomes in respiratory ECMO: an ELSO registry study
背景
患者の肥満度が、体外式膜型人工肺(ECMO)の有効性にどのような影響を与えるのかについてはデータが不足している。
ベルギーUniversity Hospitals LeuvenのPeetermansらは、Extracorporeal Life Support Organization(ELSO)レジストリで2010~2020年に呼吸不全によりECMOを受けた成人患者を対象とした後向解析を行い、BMIが35を超える肥満がアウトカムに与える影響、BMIとアウトカムとの関連の型(form)、BCMOの無益性カットオフについて評価した(n=18,529)。
結論
35以上のBMIは、傾向スコアマッチング、傾向スコア逆数重み付け(IPSW)、多変量モデルのいずれにおいても院内死亡率の低下と関連し、入院日数も短縮した。心血管合併症、腎合併症、デバイス関連合併症はBMI≧35で増加したが、肺合併症は減少した。BMIとアウトカムの関連は非線形であり、無益性のカットオフは確認されなかった。
評価
集中治療領域では肥満患者の方が予後が良い、いわゆる「肥満のパラドックス」が観察されることがあるが(https://doi.org/10.1007/s00134-019-05594-1)、本研究はECMOにおいても、このパラドックスが存在する可能性を示唆した。高度肥満はECMOの相対的禁忌とみなされているが、少なくとも単独ではECMO適用を避ける理由とはならない。