コロナワクチンががん免疫療法の効果を向上させる?
Potentially improved response of COVID-19 vaccinated nasopharyngeal cancer patients to combination therapy with anti-PD-1 blockade and chemotherapy
背景
新型コロナウイルス感染症COVID-19のワクチン接種が、がんの免疫療法を阻害しないかどうかは重要な問題であったが、ワクチン接種が免疫療法の有効性を向上させるという興味深い報告が行われた。
中国Sun Yat-sen University Cancer CenterのHuaらは、同国35施設の再発・転移上咽頭がん患者において、Sinovac社ワクチン(CoronaVac)の接種と、抗PD-L1治療の有効性・安全性の関連を評価した(n=1,537)。
結論
患者は再発・転移時に第一選択の抗PD-1治療を受けており、大半が化学療法を併用していた。9.1%が完全奏効、32.7%が部分奏効、34.2%が病勢安定であった。このコホートの24.3%がワクチン接種を受けており、ワクチン接種患者では、客観的奏効率(59.0% vs. 38.8%)、疾患制御率(80.2% vs. 74.7%)が高かった。抗PD-L1治療による軽度の免疫関連有害事象(irAE)は、ワクチン接種患者で多く発生したものの(73.6% vs. 60.1%)、重度のirAEに差はなかった。これらの知見は、傾向スコアマッチング解析でも確認された。
評価
中国産ワクチンSinovacの接種を受けた上咽頭がん患者では、治療への奏効が改善されていた。ワクチン接種がなんらかの免疫細胞の活性化をもたらす、という興味深い仮説を提示するレター論文である。