黒人・ヒスパニックの心停止者は心肺蘇生を受けにくい
Racial and Ethnic Differences in Bystander CPR for Witnessed Cardiac Arrest
背景
病院外で心停止に至った患者が、居あわせたバイスタンダーによるCPRを受けられるか否かには、その地域のCPR教育や救急司令員によるCPR支援が大きな要因として関わっている。
アメリカSaint Luke’s Mid America Heart InstituteのGarciaらは、院外心停止(OHCA)に関する全米レジストリCardiac Arrest Registry to Enhance Survival(CARES)から、目撃のあるOHCA患者(n=110,054)におけるバイスタンダーCPR実施率と、心停止が発生した地域の人種構成の関連を検討した。
結論
OHCA患者の32.2%が黒人・ヒスパニック系であった。自宅で発生したOHCAにおけるバイスタンダーCPR実施率は、白人患者で47.4%、黒人・ヒスパニック患者では38.5%であった(調整オッズ比 0.74)。また、公共空間でも黒人・ヒスパニック患者は、バイスタンダーCPR実施率が低かった(45.6% vs. 60.0%, オッズ比 0.63)。黒人・ヒスパニック患者のバイスタンダーCPR実施率は、白人住民の多い地域だけでなく(自宅/公共空間でのCPR実施 オッズ比 0.82, 0.68)、黒人・ヒスパニック系住民の多い地域(0.79, 0.63)や人種的偏りが小さい地域(0.78, 0.73)でも同様に低かった。地域の所得層についても同様の結果が得られた。
評価
黒人・ヒスパニックの心停止患者は、白人中心のコミュニティでも非白人中心のコミュニティでも、バイスタンダーCPR実施率が低く、このことが心停止生存率にも影響していた。十分なCPR教育を受けていないがために、黒人の隣人にCPRを行うことができない黒人バイスタンダーの姿とアメリカ社会の構造的人種差別が浮かび上がる。