高リスク者での定期検診により膵がんの早期発見が可能に:CAPS5研究
The Multicenter Cancer of Pancreas Screening Study: Impact on Stage and Survival
背景
膵臓は暗黒の臓器とも呼ばれ、膵がんの早期発見は非常に困難であり、ほとんどが治癒的治療が不可能な段階で発見される。
Johns Hopkins Medical InstitutionsのDboukらによるCancer of Pancreas Screening-5研究は、同病院を含む8施設で、家族歴・遺伝性症候群・生殖細胞系列変異キャリアなどの膵がん発症リスクが高い個人を登録して、年に1回のMRI・超音波内視鏡によるサーベイランスを行い、膵管腺がん(PDAC)の発見時の病期分布を調査した。
結論
高リスク者1,461名が登録された。48.5%はPDAC感受性遺伝子に病原性バリアントを有した。10名がPDACの診断を受け、うち1名はサーベイランスから脱落後4年で転移を有するPDACと診断され、残り9名中7名でI期、1人でII期、1人でIII期のPDACが検出された。9名中7名は中央値2.6年のフォローアップ時点で生存中であった。CAPS1-5試験の全コホートでは26件のPDACが診断され、サーベイランスで発見された19例のうち57.9%はI期、5.2%はIV期であり、サーベイランス外で発見された7例のうち6例はIV期であった。検診検出患者の5年生存率は73.3%であった。
評価
家族性・遺伝性リスクを有する個人での高頻度サーベイランスにより、膵がんの大半がI期で発見され、5年生存率は7割を超えた。日本では尾道方式として知られるコミュニティベースのスクリーニング戦略が、早期発見と5年生存率の改善を報告している。