インセンティブつき遠隔モニタリングプログラム、心不全入院後患者をEMPOWERできず
Remote Monitoring and Behavioral Economics in Managing Heart Failure in Patients Discharged From the Hospital: A Randomized Clinical Trial
背景
パンデミックは様々な病態に対する在宅患者へのテレモニタリングの試みをもたらしたが、心不全(HF)退院後患者では。Center for Health Care InnovationのAschら(Enhance Recovery:EMPOWER)は、3施設におけるHF退院後成人552名を対象として、利尿薬アドヒアランスと体重変化に金銭的インセンティブを付与する遠隔モニタリングの効果を検証するRCTを行った(対照:通常ケア)。
一次アウトカムは、 12ヵ月以内の死亡または何らかの原因による再入院までの時間であった。介入群では、デジタル体重計、利尿薬の電子錠剤ボトル(electronic pill bottle)、前日の服薬と体重測定の両方の遵守を条件とした後悔宝くじインセンティブ(regret lottery incentives)が与えられた(1日の予想価値、1.40ドル)。
参加者の体重が24時間で1.4kg、72時間で2.3kg増加した場合、または利尿薬を5日間服用しなかった場合、担当医に警告が出された。警告と体重は電子カルテに統合された。
結論
遠隔モニタリング介入の一次アウトカム効果を認めなかった。諸二次アウトカム(全原因入院患者の再入院/観察入院/死亡、全原因心血管再入院/死亡、最初のイベントまでの時間、全原因死亡の合計)についても有意差はなかった。介入群では、入院日数がわずかに少なくなる傾向がみられた。
評価
大きなテーマとなっている分野で、Cochraneレビューは「効果ありともみられるが、さらなる検討が必要」としていた(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26517969/)。大規模本格検証が効果を示せなかったが、著者らは、米ではすでに様々な遠隔ケアサービスが行われており、埋没した可能性もある、としている。インセンティブ付与という差別化が裏目に出たかもしれない。