メトホルミンは乳がんの予後を改善しない:MA.32試験
Effect of Metformin vs Placebo on Invasive Disease-Free Survival in Patients With Breast Cancer: The MA.32 Randomized Clinical Trial
背景
糖尿病治療に用いられるメトホルミンの服用と乳がんの予後が関連するという報告があるが、ランダム化比較試験で再現される知見なのか?
カナダUniversity of TorontoのGoodwinらは、カナダ・スイス・アメリカ・イギリスで標準治療を受ける遠隔転移のない高リスク乳がん患者を対象に、1日2回、5年間のメトホルミンまたはプラセボ経口投与を割り付けるランダム化比較試験MA.32を実施した(n=3,649)。
結論
第2回中間解析でホルモン受容体(ER/PgR)陰性患者については無益であることが宣言されたため、ER/PgR陽性患者が一次解析の対象となった(n=2,533)。浸潤疾患のない生存期間(IDFS)イベントは、メトホルミン群では100人年あたり2.78件、プラセボ群では2.74件発生した(ハザード比1.01)。死亡は各群1.46件、1.32件であった(1.10)。他3つの二次アウトカムについても有意差は認められなかった。ER/PgR陰性患者のIDFSイベントにも差はなかった(3.58件 vs. 3.60件;ハザード比1.01)。
評価
早期乳がんに対するメトホルミンの効果は認められなかった。ただ、探索的解析において、ERBB2(HER2)陽性患者の一部ではメトホルミンの有効性が示唆されており、今後の検証が注目される。