救急外来で「quiet(静か)」と口にしても忙しくはならない:ジンクスはジンクス
The Use of the Word “Quiet” in the Emergency Department is not Associated with Patient Volume: A Randomized Controlled Trial
背景
救急外来におけるよく知られた迷信・ジンクスとして、"quiet"(静か・落ち着いてる)と口にしてはならない、というものがある(このジンクスを信じる者は"Q word"と言う)。この言葉を口にすると、それまでの静けさは打ち破られ、救急外来は突如として忙しくなるのである。Rutgers Robert Wood Johnson Medical SchoolのGellerらは、レベル1外傷センターの救急外来スタッフに対し、「今日は静かでしたか Has it been quiet in here」あるいは通常の挨拶をランダムに行い、3時間後に救急の混雑程度・患者数および「静か」という言葉の使用について0-100のVAS(視覚的スケール)で尋ねた。
結論
介入日と対照日で、救急の混雑度および患者数に関する回答に差はなかった。ただし、「静か」という言葉の使用が、その後の混雑度へ影響するという信念を有するスタッフは、混雑度・患者数とも介入日でより大きく評価した。
評価
すでに複数のRCTが行われているテーマで、うち1件は日本からの結果であるが(https://doi.org/10.1136/EMJ.2010.103150.31, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0167480)、いずれの試験も「静か」という言葉の使用と患者増加との関連を否定している。本RCTの質問は、いわゆる「確証バイアス」が、このジンクスを生み出している可能性を示唆したが、このジンクスについては「平均への回帰」による説明も存在しており、検証が望まれる。