大規模ゲノムデータから未知のがんシグネチャーを多数発見
Substitution mutational signatures in whole-genome-sequenced cancers in the UK population
背景
腫瘍の発生は、遺伝子における突然変異の蓄積と関連しており、突然変異シグネチャーと呼ばれる特徴的なパターンが多く発見されている。イギリスUniversity of CambridgeのDegasperiらは、国民保健サービス(NHS)の100000 Genomes Projectを通じて前向に収集されたがんの全ゲノムシークエンス(WGS)データ(n=12,222)を解析し、変異シグネチャーを探索、さらに2つの公開WGSがんコホートでも解析を行い(n=3001, n=3417)、変異シグネチャーの特徴を解明した。
結論
臓器ごとの一般的なcommonシグネチャーの数は限られ(5から10)、稀なシグネチャーはサンプルサイズに依存して多く検出された。同じ生物学的プロセスから各組織でわずかに異なるシグネチャーが生み出されていた。この組織特異的シグネチャーのクラスタリングを行ったところ、82個の一塩基置換(SBS)シグネチャー、27個の二塩基置換(DBS)シグネチャーが特定された。このうちSBSシグネチャー40個、DBSシグネチャー18個は過去に報告されていないものであった。これらの知見に基づき、一般的なシグネチャーと稀なシグネチャーを段階的に探索するアルゴリズムSignature Fit Multi-Step(FitMS)が開発された。
評価
1万人を超えるWGSデータの包括的解析から、common/rareの概念を導入し、これまでに知られていなかったものも含め、多くの変異シグネチャーを特定した。開発されたアルゴリズムFitMSもがん治療の個別化に資するだろう。