心血管疾患の臨床予測モデル(CPM)は有用・有益か
Generalizability of Cardiovascular Disease Clinical Prediction Models: 158 Independent External Validations of 104 Unique Models

カテゴリー
循環器
ジャーナル名
Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes
年月
April 2022
15
開始ページ
e008487

背景

臨床予測モデル(Clinical Prediction Model:CPM)の開発・発表が進んでおり、メタ検証が必要な段階に達している。Tufts Medical CenterのKentらは、心血管疾患3分野(一次予防・急性冠症候群・心不全)における104のCPMを対象として、158の新規外部検証を実施した。検証は一般公開されている臨床試験コホートで行い、モデルの性能は、識別能・キャリブレーション・ネット便益尺度を用いて評価した。モデルのパフォーマンス低下の原因究明のため、CPM と臨床試験コホートのペアを関連性に基づいて層別化し、導出・検証集団の類似性を定性的に評価した。また、モデルベースのC統計量を算定し、識別能の変化が導出サンプルと検証サンプル間のケースミックスの違いに起因するものであるかどうかを評価した。モデルの更新がパフォーマンスに与える影響も評価した。

結論

モデルの導出セットと新規検証セットの間で、識別能は0.76から0.64に大幅・有意に低下した。この低下の約50%は、検証サンプルにおけるケースミックスが狭いことに起因していた。CPMは、関連性の高い臨床試験コホートで検証した場合の方が、識別能・キャリブレーションスロープが良好だった。アウトカムの1/2〜2倍を意思決定閾値可能レンジとした場合、全モデルの91%が一定の閾値で有害性リスク(デフォルト戦略を下回るネット便益)を有した。このリスクは、モデルの切片・キャリブレーションスロープの更新、または完全な再推定により大幅に低減できた。

評価

単一集団で検証されたCPMが「useless」となりうることを示したメタ検証である。ただし、適切に検証集団を増やせば改善は可能とし、「外部検証は複数集団で」というガイドラインを提唱するものともなった。最近のCPM開発トレンドはML/AIの利用だが、UMC Utrechtによる 24,814論文の系統レビューは、「未だ問題が多い」と指摘している (https://bmcmedresmethodol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12874-021-01469-6)。

関連するメディカルオンライン文献

大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)