携帯電話は脳腫瘍のリスクではない:オックスフォード・IARC調査
Cellular Telephone Use and the Risk of Brain Tumors: Update of the UK Million Women Study
背景
脳のすぐ近くで電磁波を発する携帯電話は何らかのリスクを伴うのか、携帯電話の普及当初から存在した議論は第5世代通信システム(5G)の登場でさらに活発化している。フランスInternational Agency for Research on CancerのSchuzらは、1935〜1950年に誕生した130万人のイギリス人女性を募集した前向研究において、2001年と2011年(それぞれ中央値)に携帯電話の使用について質問、National Health Servicesデータベースの死亡・がん記録と組み合わせて携帯電話使用と脳腫瘍の関連を検証した。
結論
2001年に質問に答えた女性776,156名でのフォローアップ期間14年に、3,268名で脳腫瘍が発生した。携帯電話使用による調整相対リスクは、脳腫瘍全体で0.97、神経膠腫で0.89(有意な低下)、髄膜腫、下垂体腺腫、聴神経腫瘍では1.0であった。毎日の携帯使用、10年以上の携帯使用についても、未使用者と比較して有意な関連は認められなかった。2011年の質問における週20分以上の携帯使用、10年以上の携帯使用についても同様の結果であった。携帯電話からの高周波電磁波に晒されやすい側頭葉・頭頂葉の神経膠腫については相対リスクが1を下回った。
評価
脳腫瘍全体でも、腫瘍サブタイプごとでも携帯電話使用によるリスク増加は認められなかった。電磁波が通常の使用の範囲で脳腫瘍リスクではないことを確認するエビデンスである。