心臓手術後心損傷指標としてのhs-cTnI:現行閾値は低すぎる?
High-Sensitivity Troponin I after Cardiac Surgery and 30-Day Mortality
背景
コンセンサスステートメントで心臓手術患者の周術期心筋梗塞・心筋損傷を心筋トロポニン上昇で定義することが推奨されているが、定量的エビデンスは乏しい。カナダHamilton General HospitalのDevereauxら(VISION Cardiac Surgery)は、18歳以上の同手術患者を対象として、この問題を検討する国際共同前向コホート研究を行った。術後3〜12時間時点および1・2・3日目にhs-cTnIを測定し、ピーク測定値とEuroSCORE IIスコア調整後30日死亡率との関連をCox解析した(n=13,862)。
結論
30日以内全死亡率は2.1%であった。CABG・SAVR・TAVR患者の30日以内死亡の調整ハザード比 >1.00に関連するhs-cTnI閾値は5,670 ng/Lで現行基準値上限の218倍であった。その他の心臓手術患者での同閾値は12,981 ng/Lで現行基準値上限の499倍であった。
評価
重要だがエビデンスの乏しかった問題に関し、最大唯一の前向検証を行って、従来の基準を無効化する衝撃的な結果を出した。NEJMEditorialは、実践的インパクトが大きいため、TnTや他アッセイによるTnIの検討を含め、追検証を行うべきとしている。