哺乳類の癌リスクは肉食かどうかで決まる?:ピートのパラドックス再検
Cancer risk across mammals
背景
動物の全身に存在する細胞の数は大型になるほど多くなるため、大型動物ほどがんの発症も増加すると予想されるが、大型動物のがん発症率は小型動物と大差ないことが報告されている(ピートのパラドックスPeto's paradox)。フランスUniversity of MontpellierのVinczeらは、Zoological Information Management Systemから動物園の成体哺乳類191種110,148個体のデータを収集し、がん関連死亡データベースを構築、哺乳類のがん死亡の系統樹上分布を検証した。
結論
がん死亡リスクは47種で0%、最も高いkowariでは57.14%と幅があり、10%を超える種は41あった(21.5%)。がんリスクの種間差は強い系統性シグナルを示しており、線形回帰を用いた比較が行われた。その結果、系統性シグナルは主として食肉目のがん死亡リスクによってもたらされており、そのリスクは霊長類や偶蹄目よりも有意に高いことが明らかとなった。偶蹄目は最もがんになりにくい哺乳類目であった。また、がん検出率は体重が大きくなると低下し、寿命が長くなると上昇する傾向にあった。
評価
これまでで最大規模のデータに基づいてピートのパラドックスを再確認し、加えて哺乳類のがん死亡が食性と関連することも示した。ゾウのがんの少なさに着目した過去の研究(https://doi.org/10.1001/jama.2015.13134)では、p53遺伝子のコピーが多いことが明らかにされている。動物への進化医学的アプローチはがん発生・抑制の理解をさらに深化させるだろう。