高齢者での低用量アスピリンはがんリスクか:ASPREE試験
Effect of Aspirin on Cancer Incidence and Mortality in Older Adults
背景
ASPREE試験は、オーストラリア・アメリカの、心血管疾患・認知症・障害のない70歳以上の高齢者(n=19,114)に、1日100 mgのアスピリンまたはプラセボを割り付けるランダム化比較試験であり、2018年の報告で、事前の予想に反しアスピリン群で死亡リスクが増加すること、このリスク上昇ががん関連死亡によることを示した。オーストラリアMonash UniversityのMcNeilらは、同試験におけるがん罹患率・死亡率の詳細を報告した。
結論
がんイベントはアスピリン群で981件、プラセボ群で952件発生した。全がん罹患率(ハザード比1.04)、血液がん罹患率(0.98)、固形がん罹患率(1.05)に有意な群間差はなかった。ただしアスピリンは、転移を有するがん(1.19)、診断時ステージIVのがん(1.22)の罹患リスク増加、およびステージIIIがん(ハザード比2.11)、ステージIVがん(1.31)の死亡リスク増加と関連した。
評価
アスピリンの長期服用ががんのリスクを抑制することは、堅固なエビデンスによって示されており、ASPREE試験の結果は大きな驚きをもたらした(http://doi.org/10.1056/NEJMoa1803955)。先行エビデンスとの不一致がなぜ生じたのかは不明だが、少なくとも本試験が対象とした70歳以上の高齢者で、新たに(がん予防目的の)アスピリン服用を開始することは推奨されないだろう。


