母の子宮頸がんが児に移行して肺がんを発症:国立がんセンターが世界初報告
Vaginal Transmission of Cancer from Mothers with Cervical Cancer to Infants
背景
小児肺がんは100万人に一人の極めて稀な疾患だが、母親の子宮頸がんの移行によって引き起こされた驚くべき小児肺がん症例が報告された。日本National Cancer Center Hospital(国立がん研究センター)のArakawaらは、TOP-GEAR研究における小児肺がんの遺伝子解析によって発見に至った、出生時に母親の子宮頸がんが移行したとみられる小児肺がん2例を報告した。
結論
23ヵ月時に持続する咳・喀痰によって受診した男児で、局所的な腺分化を伴う肺神経内分泌がんが発見された。男児は3歳まで無治療でフォローアップを受け、この間に腫瘍の自然退縮が認められた。2つの化学療法レジメン後に疾患が進行したため、ニボルマブ治療と肺葉切除が行われ、12ヵ月時点まで再発は見られていない。6歳時に左胸痛で受診した男児では粘液腺がんが発見され、化学療法が行われた。化学療法は部分奏効したものの再発、追加の化学療法と左肺全摘が行われ、その後15ヵ月再発は見られていない。両児とも腫瘍細胞にY染色体を欠き、母親に由来する遺伝子情報が存在した。両児の母親は出産後3ヵ月以内に子宮頸がんと診断され、いずれも子宮頸がんにより死亡した。
評価
経胎盤的な母子腫瘍移行はこれまで報告があるが、本論文の2例はいずれも呼吸器領域に局在しており、初泣きの際に羊水を肺に吸い込むことにより移行が生じたと推測された。子宮頸がんが判明した妊婦では帝王切開の選択も考慮されるべきだろう。