なぜ男性はがんになりやすいのか:Y染色体のダウンレギュレーション説
Extreme Downregulation of Chromosome Y and Cancer Risk in Men
背景
男性のがん発症・死亡は女性より顕著に多いが、この差は何によって説明されるのか。スペインBarcelona Institute for Global HealthのCaceresらは、Y染色体喪失細胞と非喪失細胞によるモザイク状化(mLOY)とがんとの関連がY染色体遺伝子のダウンレギュレーション(EDY)によって媒介されるという仮説を、Genotype Tissue-Expression Projectの正常組織(n=371)およびCancer Genome Atlas(n=1,774)・その他のがん研究(n=7,562)において検証した。
結論
EDYは複数の正常組織で発生しており、EGFR TKI耐性経路と有意に関連していた。またEDYは、LOYと年齢について調整した男性のがんリスクと強く関連しており(オッズ比3.66)、そのリスクの大きさは、EDYと同時にX染色体ホモログが機能喪失変異を示すnonrecombinant領域の遺伝子によって説明された(オッズ比2.82)。EDYは、EGFR増幅(オッズ比5.64)やEGFR過剰発現、SRY低メチル化、nonrecombinant領域高メチル化と関連しており、LOYとは異なる原因であることを示唆した。
評価
男性のがんリスクはもっぱらライフスタイルや医療探索行動の差と理解されているが、加齢とともに増加するLOYは男性の過剰がんリスクを生物学的に説明する因子として研究が進んでいる。この研究は細胞周期に関わるY染色体上の6遺伝子の機能喪失により、腫瘍抑制が失われる可能性を示唆した。新たながんマーカーや標的治療の開発につながるか、注目される。