PTEN変異のないPTEN過誤腫症候群におけるWWP1の役割
WWP1 Gain-of-Function Inactivation of PTEN in Cancer Predisposition
背景
PTEN過誤腫症候群は、Cowden病に代表される過誤腫とPTEN生殖細胞系列変異によって特徴付けられる疾患群だが、典型的な臨床特徴を持つ個人の3/4はPTEN変異のない野生型である。Beth Israel Deaconess Cancer CenterのLeeらは、Cowden病の緩和された診断基準を満たす野生型PTEN患者431名の前向コホートにおいて、PTEN機能を負にレギュレートするWWP1の変異を分析した。
結論
PTEN野生型でオリゴポリポーシスと若年結腸がん例のある1家族において、WWP1変異の存在が確立された。またオリゴポリポーシス患者の4%でWWP1変異が検出された。The Cancer Genome Atlas(TCGA)データセットでは、PHTSに関連する孤発性がん率の高い集団でWWP1変異が多く認められた(オッズ比1.5)。in vitroモデルとマウスモデルでは、WWP1変異により酵素が異常活性化し、PTENを阻害、PI3Kシグナリングを活性化することが明らかにされた。
評価
がん感受性遺伝子としてのWWP1の役割が示唆された。WWP1変異を有する野性型PTEN患者における予防・治療戦略として、WWP1-PTEN axisの調整が今後調査されていくことになろう。