脳腫瘍の治療に嗅神経鞘細胞を「トロイの木馬」として使う
Olfactory Ensheathing Cells: A Trojan Horse for Glioma Gene Therapy
背景
嗅神経は神経系では唯一成体でも継続的に再生可能なことから、脊髄損傷患者における神経再生などで試みられているが、嗅神経を用いたまったく新しい脳腫瘍治療概念が提示された。Massachusetts General HospitalのCarvalhoらは、脳にがん幹細胞を注入されたマウスの鼻腔に、5-FCを5-FUに変換する融合タンパク質を発現するよう操作された嗅神経鞘細胞(OEC)を注入し、生物発光イメージングによりモニターした。
結論
OECは嗅球から中枢神経系・脳内腫瘍に到達して導入遺伝子を送達し、腫瘍増大を抑制し、マウスの生存期間を延長した。単回注入を受けたマウスでは腫瘍関連発光が、対照と比べ減少した(平均1.08E+08 vs. 4.1E+08)。生存期間中央値は介入群41日、対照34日であった。
評価
導入遺伝子OECを「トロイの木馬」として腫瘍を標的化する新規概念を実証した。OECは炎症性分子への指向性を持ち、神経膠腫に限らない治療手段としてのポテンシャルが期待できるという。